スキゾフレニアメッセージ
わたしの名前は果林
現在高校一年生
わたしには誰にも言えない秘密があるの
それは高校に入学した時から聴こえる『声』
『声』はどうやらわたしにしか聴こえないみたい
え?
どんな声が聴こえるか知りたいって?
じゃあ教えてあげる
声は左耳から聴こえてくるの
アニメのキャラクターの声だったり、死んだおばあちゃんの声だったり、動物の声だったり。。
わたしが辛い時にみんな『頑張れ!』って励ましてくれるの
パパとママが喧嘩してる時も、教室でひとりぼっちで日向ぼっこしてる時も、みんなはわたしの左耳から楽しそうに話しかけてくれるの
だからわたしはみんながいるから頑張れる
みんながいない世界なんてあり得ないの
え?
何、これを飲むの?
心が安心する薬。。
そう言えば最近『声』達はしょっちゅうわたしの左耳に降りてきて現実との区別がつかなくなって少し困ってたの
いい機会だから、飲んでみようかな。。
ごっくん
あら?
何だか眠くなってきたわ。。。
え?
そのまま寝てもいいって?
じゃあお言葉に甘えて少し仮眠をとらせてもらおうかな。。。
夢を見た
夢の中ではパパもママも仲良しでわたしと一緒に毎日晩御飯を食べるの
わたしは学校で友達もたくさんいて毎晩、食事時にパパやママに学校であった楽しい出来事を話すの
ママは微笑みながらそれを聞き、パパは頷きながらわたしの話を聞いてくれるの
そんな幻想のようなとりとめのない夢。。
目が覚めるとそこは白い世界だった
白い壁にある掛け時計を見ると時刻はおやつの時間だった
あら、わたしこんな時間まで眠っていたのね
家に帰らなくちゃ。。
ママに叱られる
わたしはベッドの横に置いてあるキャビネットの上から鞄を取り出して部屋の扉を開け、白い世界から現実の世界へ戻った
いつもの日常
いつもの風景
いつもの人々
?
妙な感覚を覚えた
聴こえない。。
あんなにわたしの左耳に降りてきた『声』が全く聴こえない!
どうしてなの。。!
みんな、どうしちゃったの。。!
何処に行ったの。。?
わたしひとりにしないで。。
わたしを置いていかないで。。
ひとりは怖いよ。。
わたしはその場でうずくまりながら涙を流した
何時間そうしていただろう。。
気がつくと、誰かに呼ばれた
『どうしたの?』
え?
わたしの中にいる『声』達じゃない優しい甘酸っぱい声。。
優しい甘酸っぱい声の主はわたしと同じ制服を着たロングヘアの女の子だった
『さっきからずっと泣いているから気になったの』
わたしのお友達が皆んないなくなったの
『うん』
パパもママもわたしのこと見てないし、わたしひとりぼっちになったの
『わたしもだよ』
え?
『わたしもずっとひとりぼっち。あなたと一緒だよ』
優しい甘酸っぱい声はやがて透き通るような温かい声に変わって行った。。
夜空の星のカーテンコールが開かれる中、女の子とわたしは夜通し公園のブランコに座って話しをした
一方的に話すあの『声』達と比べて、女の子の声はちゃんとわたしを認識してくれて、初めて他人の『声』が心地よいと感じた
『声』って騒々しいものと思ってたの
『わたしも時々、周りの雑音から思い切り耳を塞ぎたくなる時があるよ』
うん。。何だかそう言うのも含めて現実の世界の『声』も悪くないな、って思ったの
『うん』
わたしね、現実と交差する世界でずっと夢を見ていたみたい。。ずっと現実から目を背けて、嫌なものは見ないように聴かないようにしていたの
でもどんなに避けていても結局は現実からは逃れられない運命だって気付いたの
『うん』
だったら、少しでもいいから自分を取り戻して前へ進みたいなって思ったの。。そうきっかけをくれたのはあなたのおかげなの
『そっか』
ありがとう
わたしの話しを聴いてくれて
『うん!』
朝焼けが鮮やかに立ち昇る中、女の子は腕時計を見た
『もう朝になっちゃったね、今からだけど学校行く?』
サボって保健室で寝る!
『わたしも笑!』
朝焼けを背後に、無音の中かすかにわたしの左耳から『さよなら』とアニメのキャラクターの声が聞こえた気がした